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パワー、パワーというけれど?PART3
 格闘技の世界でパンチ力のバロメーターは力そのものよりもパンチの速さにあると言われている。もちろんボクシングのように体重によって厳密に階級が分けられている分野もあるが、僕が聞いた話ではあらゆる格闘技の中で最もパンチに破壊力があるのは空手であると言う事だ。その理由がパンチのスピードである。空手の「正拳突き」というのは「前に突き出す」力よりその直後に「手前に引く」方が大事な事らしい。そうする事によってパンチのスピードが増すのである。

 これはドラムのショットと全く同じ理屈である。ドラムの場合もヒットした直後にスティックを元の位置に素早く戻すいわゆるフルストロークの場合、その戻す速度が速ければ速いほど音量も大きく、音色もいわゆる「うるさくてカンにさわる音」にならない。名人の叩くフルショットがすごく音がでかいのに耳にやさしいというのはそこらへんに理由がある。

 でもって、以前書いた「左スタートのすすめ」ではないが、「アップストロークのすすめ」を提唱したい。それも「フルストローク」である。一番高い所からスティックを「落とす」感じで(決して「振り下ろす」のではなく)ヒットした瞬間に元の位置に戻す。あたかもヘッドの表面に電流が流れていてヒットした瞬間に感電して思わずスティックを振り上げる感じと言えばわかってもらえるだろうか。音が出た瞬間にはもうスティックは戻っていなければならない。下向きより上向きの方がスピードが速いのである。こういうショットの練習をくり返す事によってスティックの移動スピードが速くなってくる。

 ここでひとつ断っておかなければいけない事がある。「じゃあ実際のプロのプレイヤーでショットの度に高々とスティックを戻している人っている?」という疑問である。ここがなかなか難しい問題で僕に言わせれば極端な話、スネアのバックビートを叩く時にヒットした後ぴったり打面にスティックをくっつけたままでいるようなタイプの人でも(ロック系、しかもヘヴィー系に多い)この僕の言うところの「アップストローク」はできている人はできているのだ。要は腕の脱力の問題であったり、実際に出ているサウンドであったりといった要素でそれが判断できるのである。そう、つまりこの僕のいう「アップストローク」もしくは「フルストローク」が本当の意味でできている人は実際にはスティックをいちいち振り上げなくても「その音」が出るのである。打面上4〜5センチの所から押し付けるようにスネアをショットしたとしても「その音」を出す事が僕にはできる。でもこの事に気が付かないままいくら押し付けて叩いても「その音」はしない。

 で、ボンゾの話に戻るが当然彼は「できている」。しかも信じられない程スムーズに。前にも書いたがあの当時のドラムセットは今程頑丈にできていない。いわゆる「下向き」の力に対してかなりもろい。あのセットをあそこまで「破壊的」なサウンドに聴かせられるのは超人的なスティックの移動スピードに支えられているのだ。

 ここで話はスティックのスピードから「ドラムに対する絶対的な力の加わり方」というNHKの物理学講座のような話題に移ろうとしている。もはや字数が尽きた。どんどん次に行こうと思う。
by folio-music | 2004-09-18 18:18 | パワーパワーというけれど


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